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【カブトムシ種類図鑑&飼育方法】国産幼虫の越冬から外国産大型種まで博物館学芸員が徹底解説

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カブトムシの飼育方法(成虫・幼虫)と飼育セット(ケース・マット・ゼリー)についてまとめました。国産のカブトムシ幼虫の越冬のさせ方から、アトラス・コーカサス・ヘラクレスなど世界の大型カブトムシの飼育方法についても解説します。


カブトムシってどんな昆虫?

これがカブトムシの特徴だ


カブトムは、コウチュウ目・コガネムシ科・カブトムシ亜科に分類される昆虫種の標準和名です。大型の甲虫で、日本では成虫は夏に羽化発生し、子供達に人気を集めます。オスは頭部によく発達した大きな角を持ち、日本の兜のように見えることから名前がつきました。この角は外骨格の一部が著しく発達したもので、餌場やメスの奪い合いの際に使用されます。

角の先端から上翅先端までの長さが野外では80ミリを超える個体はやや少ないですが、飼育下では幼虫期間に餌をより多く与えることにより80ミリオーバーの作出も比較的容易です。しかしながら、85ミリ以上のサイズを作出するのは難しいとされています。なお、ギネス記録は、飼育では86.6ミリ(2006年)、野外では87.3ミリ(2012年)となっています。


幼虫は広葉樹の腐葉土を餌とし、成虫は口のヒゲを使って樹液を吸うように摂食します。主に、クヌギ、アベマキ、コナラ、ミズナラなどの樹液をえさとしており、地域によってはヤナギやクリの樹液も摂食します。

国産カブトムシの生活史

冬までに終齢幼虫になり越冬し夏に羽化する


カブトムシは卵→幼虫→サナギ→成虫という完全変態を行います。繁殖活動を終えたメス個体は、腐葉土に潜り1個ずつ卵を産みつけていきます。1個体あたりおよそ20~30個を産みます。卵は2週間ほどで孵化し、幼虫が生まれてきます。その後、幼虫は冬までに2度脱皮を繰り返し三齢幼虫が終齢となり、この形態で越冬します。なお、この時点で体長10cmほどになっています。

越冬を終えた終齢幼虫は4月下旬から6月にかけて蛹室を作りサナギとなります。オス個体の場合は、この時点で頭部に角ができます。

成虫は夜間の気温が20度を上回るようになる初夏に出現しはじめます。温暖な地域では5月下旬頃から、涼しい地域では7月初旬頃から出現し、野生においては9月中には全てその命を終えます。成虫で越冬することはありませんが、飼育下では12月まで生きた例もあります。

成虫の飼育・産卵方法

産卵させるなら広葉樹マット・させないなら針葉樹マット


カブトムシの飼育床となるマットは産卵させる場合は腐葉土や広葉樹マットを使わなければ産卵をしません。ただし、腐葉土や広葉樹マットはダニ・コバエが発生しやすいので、産卵を目的としないのであれば針葉樹マットのほうが清潔に飼育できます。また、コバエの進入できないシートも市販されているので、ケースと蓋の間に挟むとよいでしょう。

自然界では樹液を餌にしていますが、飼育下では市販の昆虫ゼリーがおすすめです。また、果物ではリンゴやバナナなどは良質な餌となりますが、スイカやメロンなどの水分の多すぎるものは栄養価が低くおすすめできません。ベストはアミノ酸配合の昆虫ゼリーとバナナの組み合わせで、これにより長生きするとともに、状態のよい卵を産ませることが可能です。

産卵は非常に容易で、飼育ケースに広葉樹マットを敷き、雄と雌を数匹入れて繁殖活動させ、しばらく飼育していると産卵します。マットの深さは15-20cmくらいあれば十分で、産卵を確認したら卵を取り出し幼虫の飼育ケースへと移動させます。なお、孵化率が下がるので卵は素手で扱わず、スプーンなどで扱いましょう。

幼虫の飼育・越冬方法

涼しい屋外の日陰や北側の土間でなるべく遅く羽化させるのがポイント


幼虫の餌・飼育マットとなる腐植土は、専用の広葉樹マットがおすすめです。ホームセンターなどで入手できる腐葉土は農薬が混入している場合があるので避けましょう。やや高価ですが、大型の個体を作成したいのならば広葉樹チップを発行処理した発酵マットが最適です。また、クワガタ幼虫の食べ終わった菌糸マットの残りを用いると非常によく育ちます。

幼虫は共食いはしませんが、成虫になるまでにかなりのマットを必要とします。過密飼育をすると餌が足りず小型個体になってしまいますので、大型個体作出を狙うのならば単体飼育が絶対です。なお、1匹あたり1~2リットルのマットが必要です。

国産カブトムシは日本の冬期にも適応した種なので、寒さには非常に強く、逆に暖かい場所だと早期に成虫になってしまうので、屋外の日陰や北側の土間などで、なるべくゆっくりと成長させるのが大型個体作出のポイントとなります。

糞が多くなったときはマットの追加や交換が必要になりますが、カブトムシの幼虫は冬までに成長の大半の過程を終えるので9月・10月・11月の3回にわたりマットの追加・交換をすると大型個体が期待できます。また、越冬が終わり餌を再び食べ始める3月下旬にも最終のマットの追加・交換をしましょう。

6月になると早い個体ではサナギになり始めるので、気になるでしょうがマットを掘り起こすのは絶対に避けてください。また、蛹化する時期に振動などを与えるとオスの角が短くなるので、この時期には羽化するまでそっと放置をしておきましょう。万が一、蛹室を壊してしまったときは人口蛹室などもありますが、羽化率はかなり低くなります。

おすすめ飼育セット

常に一回り大きなケースを使うのが基本


カブトムシ飼育の基本ポイントは、考えているよりも一回り大きなケースで飼育することです。過密になると成虫はストレスで早死する傾向が強くなり、幼虫にいたっては大きく育てることが困難になります。

飼育に用いるのは上のリンクのような専門ショップから市販されているケースセットがおすすめです。ホームセンターなどで販売されている昆虫ゼリーや発効マットの安価なものは、確実に栄養分の少ない粗悪品となりますので気をつけてください。


発酵マットはこちらのようなタイプがおすすめです。外国産カブトムシを飼育するための栄養豊富な高級品ですので、国産カブトに用いるとかなりの大型個体の作出が期待できます。


成虫の餌におすすめなのが、こちらのようなアミノ酸配合の高級ゼリーです。一般の安価な昆虫ゼリーは、ほぼ砂糖水程度の栄養価と考えてください。大型個体作出のためには高タンパク質のゼリーをメス個体に与え、スタートラインからより大きな卵を産ませることが肝心です。

世界のカブトムシ紹介

規制緩和で世界中のカブトムシが飼育可能に


かつては植物防疫法により外国産カブトムシの輸入は禁止されていましたが、1999年(平成11年)に植物防疫法が規制緩和され、海外産カブトムシの輸入が解禁となりました。これにより、日本国内で世界のさまざまなカブトムシを入手・飼育できるようになりました。2016年現在、53種類のカブトムシが輸入が可能となっています。

現在では、通信販売で容易に海外産大型カブトムシが購入可能ですので、ご紹介したいと思います。

アトラスオオカブトは、フィリピンやインドネシアなど東南アジアの低地に分布している大型カブトムシです。アジア最大種のコーカサスオオカブトに似ていますが、やや小型で胸角が細く、頭角の突起がありません。

コーカサスオオカブト

アジア最大そして世界最強


コーカサスオオカブトは3本の長い角が特徴のアジア最大のカブトムシです。闘争心が旺盛なため南米原産のヘラクレスオオカブトとともに世界最強カブトムシの双璧とされます。原産国が東南アジアなので日本に近く、また年間を通じて捕獲ができるので、国内で流通している外産カブトムシのなかでは安価です。頑強なので、オオカブト類の飼育の入門にも最適です。

ケンタウルスオオカブト

アフリカ大陸唯一の大型カブト


ケンタウルスオオカブトはアフリカ大陸で唯一の大型カブトムシです。成虫の寿命は短く、飼育も難しいとされており、上級者向けと言えるでしょう。

エレファスゾウカブト

世界最重量級


ゾウカブトは、北アメリカ南部、中央アメリカ、南米大陸各地にさまざまな種類が生息していますが、そのなかでも最大種がエレファスゾウカブトです。世界一体重が重いカブトムシとして知られ、成虫の寿命は比較的長く10ヶ月ほどあります。

ネプチューンオオカブト

高山性巨大カブトムシ


アンデス山脈の熱帯雨林に断続的に分布しているヘラクレスオオカブトに近い仲間です。成虫の寿命が長く、1年近くありますが、流通量が少ないのでかなり高価なカブトムシです。また、高地性なので夏の暑さには注意が必要です。

ヘラクレスオオカブト

世界最大のスーパースター


言わずと知れた世界最大のカブトムシで、中央アメリカから南アメリカの雲霧林に断続的に分布しています。また、大型の個体は標高1000〜2000mの高山帯にしか見られません。幼虫は朽木や腐葉土の中で1年半~2年程かけて成長し、成虫の寿命も長く、1年~1年半ほど生きる個体も少なくありません。

世界の大型カブト飼育法

冬期の加温さえ気をつければ意外と簡単


世界各国の大型カブトムシをご紹介しましたが、その成虫の飼育は国産カブトムシとほぼ同様です。ただし、成虫寿命の長い種類では冬期に加温する必要があります。また、幼虫は成虫になるまでに2年ほどかかりますので、こちらも冬期に加温する必要があります。マット類の交換なども国産カブトムシと同様です。成虫や幼虫の加温には、専用のマットヒーターを使うのが経済的でおすすめです。

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