グリホサート(除草剤ラウンドアップ主剤)がホタルなど水生無脊椎動物に与える影響

※写真はイメージです

当会(伊勢志摩里山談話会)が経年調査を行っている伊勢市宮川水系の某河川において、数年前からヘイケボタル(学名: Luciola lateralis)およびゲンジボタル(学名:Luciola cruciata)の減少が著しくなってきていますが、当該河川の堤防への除草剤散布が開始されたタイミングと一致していることが判明しましたので、これらの因果関係、つまり当該河川で使用されている除草剤成分・グリホサートが水生無脊椎動物に与える影響について考察します。




■ヘイケボタルとゲンジボタル

Japanese Firefly ヘイケボタル Luciola lateralis.jpg
写真:ヘイケボタル(Wikipediaより)

ゲンジボタル
写真:ゲンジボタル(Wikipediaより)

国内で一般的に見られるホタル類にはヘイケボタルとゲンジボタルがあり、それらの生態的特徴は以下の通りです。

  種名   生息域 大きさ  分布
ヘイケボタル 水田等 10mm 東アジア
ゲンジボタル 河川等 15mm 日本固有

なお、ホタル類は幼虫期を水中で過ごす水生昆虫で、初夏に上陸、堤防などの土中で蛹化したのち羽化して陸上生活に移行します。

ヘイケボタル

日本では、ゲンジボタルと並んで、身近な光るホタルである。ゲンジボタルより小型で、より汚れた水域にも生息する。ゲンジボタルが日本固有種なのに対し、東シベリアや朝鮮半島などにも分布する。また、ゲンジボタル、クメジマボタルと並んで幼虫が水中棲息するホタルであり、日本産水生ホタル3種の中では最も小型である。

名称は、ゲンジボタルとの対比で、似ているがより小型であることからの名づけられたものと思われる。ゲンジボタルが渓流のような清冽で、流れのはやい水域に生息するのに比べ、ヘイケボタルは水田、湿原といった止水域を主たる繁殖地としている。幼虫の餌になるのは、止水に生息するモノアラガイなどである。

引用:Wikipedia「ヘイケボタル」

ゲンジボタル

成虫の体長は15mm前後で、日本産ホタル類の中では大型の種類である。幼虫は灰褐色のイモムシのような外見で、親とは似つかないが、すでに尾部に発光器官を備えている。幼虫はすぐに川の中へ入り、清流の流れのゆるい所でカワニナを捕食しながら成長する。カワニナを発見すると軟体部にかみつき、消化液を分泌して肉を溶かしながら食べてしまう。

成虫は5月から6月にかけて発生する。夜に活動するが、昼は深い草陰で休んでいる。成虫になると水分を摂取するのみで、活動や産卵は幼虫時代に摂った栄養分でおこなう。成虫の期間は2-3週間ほどしかない。

引用:Wikipedia「ゲンジボタル」

■グリホサートとは

グリホサートイソプロピルアミン塩の構造式

グリホサート(化学式C3H8NO5P. C3H9N)は1970年代にアメリカの企業モンサント社が開発した除草剤の主成分で、商品名はラウンドアップ(英語: Roundup)です。

その作用としては、有効成分のグリホサートイソプロピルアミン塩が、ほぼ全ての植物のタンパク質代謝を阻害し枯死させるというものです。

なお、現在ではラウンドアップという商品名に限らず、数多くのジェネリック製品で同成分が使用されています。

有効成分名はグリホサートイソプロピルアミン塩。グリシンの窒素原子上にホスホノメチル基が置換した構造を持つ。イソプロピルアンモニウム塩ではないグリホサート自体の分子量は169.07で、CAS登録番号は1071-83-6である。

5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(EPSPS)阻害剤で、植物体内での5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸の合成を阻害し、ひいては芳香族アミノ酸(トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン)やこれらのアミノ酸を含むタンパク質や代謝産物の合成を阻害する(シキミ酸経路参照)。接触した植物の全体を枯らす(茎葉)吸収移行型で、ほとんどの植物にダメージを与える非選択型。

引用:Wikipedia(ラウンドアップ)

■グリホサートの安全性を主張する見解

①開発製造元モンサント社の報告

グリホサートの開発・製造元である米モンサント社による最新の報告(2016年)では、ミツバチや両生類の幼生などに対する実質的な無毒性が主張されています。

3.3 グリホサートとミツバチ

この項は、もともと「包括的な環境アセスメントと管理(Integrated Environmental Assessment and Management)」の査読を受けた論文として発表されたものである。この論文は出版社のサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4285224/)で閲覧できる。

3.5.12 グリホサートは両生類の幼生に毒性を持たない

両生類幼生、特にオタマジャクシに対するグリホサートを有効成分とする除草剤の報告がここ数年されている(Relyea, 2005; Relyea et al., 2005; Meza-Joya et al., 2013 等)。これらの研究の多くは界面活性剤を含む除草剤製品を、両生類幼生を含む水界生態系に使用するもので、しばしば陸上での使用に製品表示で許されている量を超えて使用される。その上でこれらの研究者は、生死やその他の毒性についてさまざまな測定結果を報告している。グリホサート自体は両生類に対する試験を経ており、その結果は一貫して毒性レベルの低さを立証している(EPA, 1993; Giesy etal., 2000)。Giesy ら(2000)は、グリホサート及びグリホサートを有効成分とする除草剤の両生類への毒性に関して入手可能なデータを検証し、グリホサートを有効成分とする除草剤はグリホサートのみよりも毒性が高いと結論した。Giesy らは、この差を除草剤製品中の界面活性剤の存在が原因としている。界面活性剤は細胞膜を破壊し、細胞機能の喪失を招く(Lucy, 1970;Dimitrijevic et al., 2000)。水生生物のえらに加えいずれの部位でも、界面活性剤によって細胞が死滅すれば当然のことながら個体死または外傷となる。この理由から、水中使用を意図したグリホサートを主成分とする除草剤には界面活性剤は含まれておらず、また、界面活性剤を含む陸上使用の製品は水路への製品の使用を禁止し、製品を水路に流れ込ませないよう使用者に指示する注意書きがある。表示に従って使用されれば、グリホサートを有効成分とする除草剤は両生類に危害を与えずに使用できる。

抜粋引用:グリホサートの有益性と 安全性 - Monsanto

②米国環境保護庁(EPA)による報告

アメリカ合衆国環境保護庁(アメリカがっしゅうこくかんきょうほごちょう、英: United States Environmental Protection Agency, EPA)は、2015年10月14日にグリホサートに関する情報を下記のように更新しています。

米国環境保護庁(EPA)は10月14日、グリホサート(glyphosate)に関する情報を更新した。概要は以下のとおり。

1.グリホサートは1970年代から農薬として使用されている。

2.グリホサートは、多くの場所で雑草を防除するために、ラウンドアップ(Roundup(R))等の製品中で使用されている。

3.グリホサート製品は、以下のような表示の指示に従うことで、安全に使用することが出来る。

(1)グリホサートはヒトに対して低い毒性を有する。

・目刺激性を有する製品には、保護メガネの着用が推奨される。
・当該製品の散布12時間後に、農地に入ることが許可されている。

(2)グリホサートの鳥類に対する毒性は僅かであり、魚類、水生無脊椎動物、及びミツバチに対しては実質的に無毒性である。

・一部の製品は、一部の魚類に対して毒性を有する成分を含む。
・魚類及び水生環境を保護するため、ラベルの指示に従うこと。

抜粋引用:内閣府食品安全委員会「米国環境保護庁(EPA)、グリホサートに関する情報を更新」

■グリホサートの有毒性を主張する見解

①厚生労働省による記載

厚生労働省の公式ページの一つである「職場のあんぜんサイト」には下記のように、本製剤の水生生物に対する毒性が示唆されています。具体的には水生環境有害性の区分2に該当しています。

環境に対する有害性
水生環境有害性 (急性) 区分2
水生環境有害性 (長期間) 区分2

危険有害性情報
重篤な眼の損傷
眠気又はめまいのおそれ
水生生物に毒性
長期継続的影響によって水生生物に毒性

抜粋引用:厚生労働省職場のあんぜんサイト「グリホサート」

水生環境有毒性とは

急性水生毒性とは、化学物質への短期的な暴露における、当該物質の生物に対する有害な性質を意味する。

慢性水生毒性とは、水生生物のライフサイクルに対応した暴露期間に、水生生物に悪影響を及ぼすような、物質の潜在的な、または実際の性質を意味する。

区分:急性 2

1 mg/l < 96 時間 LC50(魚類に対する)≦10mg/l または
1 mg/l < 48 時間 EC50(甲殻類に対する)≦10mg/l または
1 mg/l < 72 または 96 時間 ErC50(藻類または他の水生植物)≦10mg/l

区分:慢性 2

1 mg/l <96 時間 LC50(魚類に対する)≦10mg/l または
1 mg/l <48 時間 EC50(甲殻類に対する)≦10mg/l または
1 mg/l <72 または 96 時間 ErC50(藻類または他の水生植物)≦10mg/l
であって急速分解性ではないか、または log Kow≧4 であること(実験的に求められたBCF<500 でない場合に限る)、ただし慢性毒性 NOEC>1mg/l の場合を除く。

引用:厚生労働省「環境に対する有害性」

②ネットメディアHUFFPOSTの記事

大手ネットメディアのHUFFPOSTに、モンサント社・グリホサートに関する下記のような記事があります。

モンサントが開発した強力な除草剤「ラウンドアップ」は発がん性があると疑われているが、パトリック・ムーア博士はそれを否定。「ラウンドアップを1リットル飲んでも害はない」と主張したが、飲むように促されると拒否した。

世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(IARC)が2015年3月下旬に発表した報告書では、ラウンドアップの主要成分であるグリホサートは5段階ある発がん性分類リストのうち上から2番目にリスクが高い「発がん性が疑われる」(2A)カテゴリーに分類された。

この「2A」というカテゴリーは、おそらく発がん性があるというレベルだが、このカテゴリーの信ぴょう性に関しては異論を唱える科学者もおり、意見が分かれている。

そしてこのモンサントの見解を支援する科学者のひとり、パトリック・ムーア博士は「ラウンドアップを1リットル飲んでも害はない」と主張している。

抜粋引用:HUFFPOST「科学者「モンサントの除草剤は飲んでも安全」じゃ、飲んでみて? と言ったら......」

■考察

除草剤グリホサートの水生生物に関する報告・見解は、無毒性を主張するものから毒性を示唆するものまで多岐にわたっており、現状で断言はできないものの、無毒性を主張する見解・報告はあくまでも一定の使用量と使用方法の範囲内のことであり、過度な使用が水生生物への毒性を示すことは十分に考察できる。

本除草剤の一般(いわゆる素人使用)での使用状況を推測するに、ラベルに指示されている単位面積当たりの使用量などを厳密に守って使用しているケースは少ないと考えられ、むしろ、過剰に散布されていることが考えられる。

このため、河川周辺・堤防におけるグリホサートの散布が当該河川のホタル類に何らかの悪影響を与えていることが推測される。

さらに、冒頭でも述べたようにホタル類は初夏に土中で蛹化するため、この時期に堤防等に過剰なグリホサートが散布された場合、製剤が土中に浸透し、土中のホタル幼虫に高い毒作用を引き起こすことも考察される。


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