PNLGフォーラム2014参加レポート

はじめに 

 志摩市は、沿岸域の自然環境保全と持続可能な開発を目的に、沿岸域の総合的管理(Integrated Coastal Management:ICM)を実践している東アジアの9か国(カンボジア、中国、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、韓国、タイ、ベトナム)の37自治体が参加するPNLG(PEMSEA Network of Local Governments:PEMSEA地方自治体ネットワーク)に加盟しています。

PEMSEAウェブサイト

 昨年9月には、志摩市でPNLGの定期大会であるPNLGフォーラム2013を開催し、11か国から164名の参加がありましたが、今年の定期大会は、9月8日(月)から10日(水)まで、マレー半島とスマトラ島に挟まれたマラッカ海峡に面したマレーシアのセランゴール州、セパン市で開催され、志摩市からも職員が参加しました。また志摩市と沿岸域の総合的管理の取組に関する共同調査研究を実施している海洋政策研究財団(OPRF)もオブザーバーとして参加されました。

 セパン市はマレーシアの首都クアラルンプールの南に位置し、パームヤシの栽培が盛んに行われています。マレーシアの玄関口であるクアラルンプール国際空港があるほか、F1マレーシア・グランプリが開催されるセパン・インターナショナル・サーキットもセパン市にあります。また"マレーシアのシリコンバレー"と呼ばれるサイバージャヤ地区には多くのハイテク企業が進出しています。今回PNLGフォーラムが開催されたアバニ・セパン・ゴールドコースト・リゾートは遠浅の海岸地形を活用して水上コテージが整備されているすばらしいリゾート施設でした。

 今回のPNLGフォーラムのテーマは「沿岸域の総合的管理を通した統治と拡大」となっており、持続可能な地域づくりに向けて沿岸域の総合的管理の推進や拡大について話し合いが行われました。

9月8日(月)(1日目)

 大会初日は開会式と総会が開催されました。

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 開会式では、PNLG議長のPrak Sihara氏、PNLGの運営を支援しているPEMSEA(東アジア海域環境管理パートナーシップ)事務局長の Stephen Adrian Ross氏の挨拶の後、セパン市議長のMohd Sayuthi bin Bakar氏、セランゴール州知事のTan Sri Abdul Khalid bin Ibrahim氏から歓迎挨拶がありました。

 引き続いて総会が開催され、事務局から昨年志摩市で開催されたPNLGフォーラム2013やPNLG執行委員会の開催結果、昨年10月から今年8月までの活動状況などが報告されました。

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 次にPNLGへの新規参加自治体として、中国のBeihai市(北海市)とマレーシアのセパン市がPNLG憲章に署名して挨拶を行い、PNLGの参加自治体数は37となりました(準会員2団体を含めて39)。

 続いて2011年に中国の東営市で開催された定期大会で採択されたDongying Declaration(東営宣言)において、2015年を目標年度としている以下の行動計画の進捗状況と達成に向けた話し合いが行われました。

目標6 : 2015年までに会員数を倍増する

目標3 : 2015年までに全ての会員が統一様式による「沿岸域報告書」を作成する

目標2 : 2015年までに会員の半分がPEMSEAが提唱する沿岸域の総合管理に向けた行動指標を導入する

 志摩市は現在、第1期の里海創生基本計画(沿岸域総合管理基本計画)の成果を評価する時期を迎えており、目標2と目標3については、評価作業とあわせて検討していくことが必要であると感じました。この作業については、海洋政策研究財団と協議しながら進めて行きたいと思います。また、目標6について、日本国内からは海洋政策研究財団のモデルサイトであり、沿岸域の総合的管理に向けた協議会を設置することを表明している福井県小浜市の参加が期待されています。 

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 総会の最後には、今回の大会開催地であるセランゴール州から、来年の開催地であるベトナムのダナン市にPNLGの大会旗が引き継がれ、終了となりました。来年のPNLG定期大会は、3年に一度開催される東アジア海洋会議(EAS Congress)とあわせて開催されることになっています。

 

9月9日(火)(2日目)

 大会2日目は沿岸や海洋統治に関する優良政策と取組に関する技術ワークショップが開催されました。

 ワークショップの開催にあたって、志摩市にも何度かお越しいただいて志摩市の沿岸域の総合的管理についてご指導をいただいているChua Thia-Eng博士から「沿岸域の総合的管理を推進する中から学んだ経験、良い取り組みと教訓」として熱のこもった基調講演が行われました。

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 Chua Thia-Eng博士はもともとは水産学の先生ですが、持続可能な沿岸域資源の活用に向けて総合的な管理の必要性を提唱するだけでなく、20年以上にわたって実際に管理を行うシステムの構築と普及に取り組んでおられます。昨年の12月にはこの功績が評価され、東アジア海域パートナーシップ協議会の名誉議長となられています。

 続いてさまざまなテーマに分けて、ケーススタディなどが行われました。

1:沿岸と海洋の統治、持続可能な開発の状況と連携に関する優良事例

 事例報告

  報告者:バタンガス(フィリピン)、シアメン(中国)、ダナン(ベトナム)、バターン(フィリピン)、クラン(マレーシア)

 パネルディスカッション

  パネリスト:ギマラス(フィリピン)、チャンウォン(韓国)、中国、北セランゴール(マレーシア)、志摩(日本)

 最初のケーススタディでは、5つの自治体から詳細な事例報告が行われました。また、パネルディスカッションでは、志摩市のこれまでの取り組み経過などについて報告を行い、真珠養殖業者の皆さんの小さな干潟再生の取り組みをきっかけとして、次第に大学の研究者や市、県、国が参加する大規模な調査研究事業にスケールアップしていったことや、この調査結果をきっかけに、志摩市の新しい里海創生によるまちづくりがスタートしたこと、また、干潟の再生に企業が参加することとなり、最近では「里海」をテーマとした集客交流イベントや物品の販売といった事業活動が展開されるようになっており、地域の活性化につながっていくことが期待されていることを報告しました。

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 パネルディスカッションのファシリテーターを努められたフィリピン大学海洋科学研究所のGil Jacinto博士から、志摩市の新しい里海創生によるまちづくりについて、日本の古くからある概念に基づく持続可能なまちづくりに向けた取り組みとして、高く評価していただきました。

2:地方自治体がICMの拡大や優良事例を参考にするための情報共有の場の構築について

 パネルディスカッション

  パネリスト:シアヌークビル(カンボジア)、チョンブリ(タイ)、カビテ(フィリピン)、アモイ大学沿岸海洋管理研究所(中国)、第一海洋研究所(中国)

 シンガポール大学生物科学学科・海洋生物研究室のChou Loke Ming博士がファシリテーターを務め、PNLGの目的のひとつである、沿岸域の総合的管理に関する情報共有を図るために、どのような場、出版物、サービスが必要であるのかについて、各会員からの報告と話し合いが行われました。

 情報共有に向けて、2015年の11月を目標に各自治体の取り組み事例を取りまとめて出版することとなっており、「志摩市の取り組みについても掲載するので、原稿を作るように」と指示がありました。来月末が第1稿の締め切りということなので、急いで作業する必要があります。

3:総合討論 ドンイン宣言の目標達成に関する行動計画とスケジュール及び情報共有のあり方について

 第1日目の総会や2日目の技術ワークショップで話し合われた内容について総合討論が行われ、具体的な行動計画やスケジュールの調整が行われました。志摩市も沿岸域報告書の作成に取り組む必要があるとされました。


 技術ワークショップでは、上記のような話し合いが行われましたが、中・長期の戦略的な行動計画に基づいて、スケジュール管理を行い、しっかりと進捗管理されていることを強く感じました。志摩市のまちづくりも、関係する皆さんとしっかりと目的を共有し、体系的な取り組みを進めていく必要があると思います。

 

 9月10日(水)(3日目)

  3日目はセランゴール州内のさまざまな施設や取り組みの現地視察が行われました。

 最初に訪れたのはBanghuris Agro Tourというマレーシアの伝統的な文化や生活を体験する施設です。

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 この施設では、マレーシアの料理やさまざまな儀式、農業などを滞在しながら体験することが出来るそうです。志摩市でも志摩市ならではの体験をコーディネイトしていく「里海学舎」の準備を進めており、拠点となる施設として参考になりました。

 次に訪れたのはKuala Selangor Nature Park(自然公園)です。

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 この公園は、もともとマングローブ地帯だった海岸を埋め立てて造成されたそうですが、現在は自然公園として整備され、環境学習拠点として活用されているそうです。セランゴール州や環境保全活動を行っているNGOによって運営されており、企業も支援しています。

 園内では野生のサルがたくさんいますが、餌を与えないなど決して人が干渉せず、自立して生息できるようにしているとのこと。日本ではニホンザルに農地を荒らされたりしていますが、どうすればこのように共生できるのかと考えさせられます。

 また、この地域は北半球と南半球を行き来する渡り鳥のコースにあたり、多くの渡り鳥が羽を休めに立ち寄るそうです。日本からもたくさんのバードウォッチャーが訪れるそうですよ。園内には野鳥観察用のタワーが3か所に設置されていました。タワーの写真から見える森はマングローブで、その向こう側は海岸です。海岸ではマテガイなどの二枚貝が多く獲れるのだということです。

 最後に訪れたのはクアラルンプールの北西を流れるセランゴール川にあるホタルの観察施設です。

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 セランゴール川にはホタルの幼虫の餌になる巻貝がたくさんいるのでホタルの生息に適していて、周年ホタルを観察することができるそうです。乗客が4人しか乗れない小さな手漕ぎのボートに乗ってのんびりと川岸近くを進むと、真っ暗な川面のあちらこちらから「Wow!」「Beautiful!」という声が聞こえてきます。日本ではホタルといえば田んぼの上をゆっくりと優雅に飛ぶ姿を想像しますが、マレーシアでは川沿いの特定の種類の木(名前はわかりませんでした)にびっしりと集まって発光します。発光時間が短くて周期も早いので、チカチカ光る感じで、まるでクリスマスツリーのようでした(ストロボ撮影が禁止されていますから、残念ながら写真はありません)。豊かなセランゴール川の環境保全と観光施設や環境教育の場として、総合的に管理運営されている素晴らしい施設でした。

 

おわりに

 こうして3日間の会期を無事終了しました。これからも同じ思いでまちづくりに取り組んでいるPNLG会員の皆さんと、沿岸域の総合管理に関するノウハウを共有しながら、お互いの地域の活性化や、交流を進めて行きたいと思います。

 昨年はフォーラムの現地事務局として、初めて国際会議の運営に関わり本当に大変だったことを思い出しましたが、これから志摩市に海外から多くの方々を迎えていく上では非常に有意義な経験になったと思います。また、昨年志摩市を訪れていただいた多くの方々と再会し、「志摩市で食べた魚は美味しかったよ」とか、「海女小屋で食べたサザエが最高だった」と言っていただけたことが嬉しかったですね。

 大会の事務局であるPNLGとPEMSEA事務局及びセランゴール州の皆さんにこの場を借りてお礼を申しあげます。